音楽用語でハーモニーという言葉は皆よく知っているが、テンション(緊張)という言葉を知っている方は少ないように思う。ハーモニーを作り出す和声の中に、意識的に取り込まれる不協和音、9thや11thなどの音で、ブルースやジャズで使われるようになり、現在ではポピュラー音楽ではごく当たり前に使われている。話は変わるけれど、民主主義社会はすべてがイエスマンでは成立しない。独裁者が支配し反対する者を許さぬ社会とは、相容れない正反対に位置するのが民主主義の社会である。ハーモニーの中に不協和音、即ちテンション(緊張)を取り入れて、なお、かつ音楽として成立させてゆくのが、アメリカ生まれの音楽、ブルースやジャズ、そしてポピュラー音楽であるならば、アメリカ社会が生み出してきた民主主義もこれと同じだろう。社会のハーモニーの中に、人種的、宗教的、思想的なテンションを取り込んで、それでも社会を成立させてゆく、その理想を掲げて来たのがアメリカの民主主義だったように思う。しかし、現在のトランプ大統領は一体どんな社会を目指しているのだろう? 音楽に戻るが、テンションの存在によって音楽は動的ダイナミズムを孕み動いてゆく、前進してゆく。水は動かなければ腐っていく。テンションのない、イエスマンばかりの独裁政治の社会は歴史を振り返るまでもなく腐ってゆく。(蔦文蔵)
テンションと民主主義

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