山田風太郎の明治もの、開化小説とも呼ばれる作品に、黒岩涙香を主人公にした短編がある。「明治バベルの塔」という作品で、萬朝報の社長である黒岩が読者数を増やすために、懸賞金を付けたカタカナ暗号文の謎解きを萬朝報に掲載するのだが、その暗号文がまき起こす事件がこの小説の骨子となっている。小説中で黒岩涙香が作ったことになっているカタカナ暗号文は、作者の山田風太郎のオリジナルな創作だが、これが最後にどんでん返しとなり、見事なオチとなって作品を締めくくる。この作品を暗号小説と山田風太郎は自ら呼んでいるが、推理小説作家としての山田風太郎の面目躍如、暗号が読者をニヤリとさせる巧みな仕掛けとなっている。(anjinho)
日本推理小説事始(1)番外編

コメント