紫金陳の魅力

蔦文蔵's EYE

 中国の紫金陳の「悪童たち」がハヤカワ・ミステリ文庫で2021年に刊行されたが、すでに目を通されて衝撃を受けた方も多いのではないだろうか。少年による犯罪を倒叙形式で描いたものだが、情報統制の厳しい中国らしからぬ、社会の暗部に目を向けた題材とストーリー展開、そしてエンディングの見事なひねりは、華文ミステリーの既成概念を少なからず打ち破るものであった。

作者の紫金陳は、次々と作品が映像化されていて、中国で現在もっともポピュラーなミステリー作家の一人だそうだが、彼の作品には現在の中国を反映するように、各大都市にはりめぐらされている監視カメラ「天網」をかいくぐるトリックがしばしば登場してくる。常に「今の時代」を描きたいと語る紫金陳は、そのインタビューでミステリーも技術の進歩に沿って進むべきであると述べ、またストーリーを重視すべきで、ストーリーが悪ければトリックがどれだけ良くても無意味だと述べている。

社会派ミステリーを描く紫金陳が、どれだけ現在の中国社会と対峙していけるのか、今後の彼の作品がとても楽しみだ。ちなみに日本では「悪童たち」、「検察官の遺言」、「知能犯之罠」、「知能犯の時空トリック」の4冊がすでに翻訳され刊行されている。(蔦文蔵)

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