「新青年」が創刊されたのは、大正9(1920)年、おりしも黒岩涙香がこの世を去った年であった。「新青年」の初代編集長の森下雨村は愛読する探偵小説を雑誌の目玉にと考え、翻訳ミステリの掲載に力を入れたが、ある人物の出現によって、日本人による創作ミステリに目を向けることになる。その人物、江戸川乱歩は、探偵を志し「新青年」が創刊された年に探偵事務所の門を叩くが不採用だったため、執筆に専念、原稿を森下雨村に送り付け「新青年」への掲載を迫った。その原稿「二銭銅貨」を読んだ森下は「これが日本人の創作だろうか」と驚き、大正12(1923)年、江戸川乱歩が「新青年」にデビューすることになる。こうして「新青年」でデビューを果たした乱歩は、さまざまな作品を発表していくが、また親しかった関西在住の横溝正史を上京させ、横溝正史は森下の後任の編集長となる一方で、作品を発表していった。(anjinho)
日本推理小説事始(3)

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